また、擁護論には、どうも「業界のこと、クリエイターのことをわかっていないのに何を言っているのだ」
という風潮(実際にそういう記事も)があり、いかがなものか?と思います。
(このまま、この風潮が進むと、制作物に大枚を払う価値が薄れますし、そもそもそうした人に、
”商業”の仕事はお願いできないと思います)
今回の話は、いったいどこがおかしくて、どうすれば良かったのでしょうか?
① 初期の対応はどうだったのか?
まず、佐野さんは、「ベルギーのデザインを見たことがない」と会見で言っています。「全く似ていない」とも。
これは、どうなのでしょう?そもそも会見は「似ている」(少なくとも普通の感覚では似ているし、「似ている」
と言っている人が多くいる)ことから起こったことなのです。
「似ている」かどうかは「結果」の話なので、「デザインの過程」とは違う話です。
「全く似ていない」と言われていったいどの位の人が納得するのか?
「通常の仕事ですと調べるんですけど、世界中の印刷物を調べるのは無理。」とも言っているようですが、
「結果が似てしまった責任」
はとるべきだと思います。
そもそもデザインプロセスが違えば、同じデザインでも良いのか?と考えると、デザインプロセスの話で逃げるには「無理」があります。
「真似はしていません。でも結果が似てしまったのは、知らなかったこととはいえ、ごめんなさい」の方が普通の対応だと思います。
これができなかったのは「五輪」の圧力なのかもしれませんが。
強気な言い方の後で、言い逃れのできない「ぱくり」(サントリーの件)が発覚したことで、もう恐らく復活できない状態になっているでしょう。
「通常の仕事だと調べる」というのは、「似てたらまずいから」であるはずなのに、一方では、「世界中の印刷物を調べるのは無理」と言っている。
ベルギーのデザインが調べて見つかっていたら、どうするのか?
「通常の仕事だと調べる」と「プロセスが違うから良い」は自己矛盾しています。
② 五輪関係者の対応はどうだったのか?
五輪関係者も基本的には「佐野さん」と同じスタンスをとったようですが、そもそも「似たデザインが発生しやすい」
ローマ字を元にしたロゴを採用する必要があったのでしょうか?
普通の会社なら「リスクとメリットを見定めて」話をすすめると思います。
とするなら、ローマ字変形のロゴ、は採用しないのではないでしょうか?
あのロゴが今回のように、似ている、といわれてしまうリスクを冒してまでも採用したいほど魅力的である
とは(主観的ではありますが)思えない。
デザイナーの皆さんも「こういうロゴは似てしまうものだ」という論調の様ですが、だったら、そんな似てしまう
リスクのあるデザインは初めから採用しない方が良い。
③ 何を考えてどうするべきだったのか?
デザイン事務所は「デザインを売って」お金にするはずなので、まずは、「デザインを何のためにするのか」を考えないといけません。
特に広告のデザインは「多くの人に商品を知ってもらう」などの目的で作成されます。そのためにクライアントはお金を払うのです。
従って、今回の対応は「一般がどんな反応をするのか」を考えて、話をするべきだったのです。
「トレース」と「コピー」は違う!
とか、
今回のデザインが「全く似ていない」
とか、
これらが、一般にどう思われるのか、
その人たちの支持を得るためにお金を払っているクライアントのことを考えて
対応すべきであったのです。
自分たちの世界の常識もそうですが、相手のことを考えて対応すれば、