前回、震災により
・ 国内製造業の海外移転の加速
・ 国内製造業の弱体化
により、国内製造業従事者の賃金低下などが起こり、消費の冷え込
みが起こるのではないか?と言うお話をいたしました。
短期的に見ると、そんなに悪化していない様にも見えるのですが、
それは、「労働の需給に所得があまり関係ない」人たちが結構居る
からかもしれません。
その人たちとは「年金生活者」の方達のことです。現在では人口の
1/4近くが65歳以上の高齢の方達です。15歳以上の人口の中
での割合は1/4を超えています。
年金は基本的に減らないですし、解雇されることもないので、安定
的なターゲット市場であると言えます。この方達は今後も我々の有
望なターゲットであり続けることでしょう。
一方で残りの3/4の方達にはこの影響をもろに受けることになり
ます。リコーも従業員の大幅削減を発表しました。
こんな状況の中、震災に学んで我々にできることには、どんなこと
があるのでしょうか?
今回の震災で明らかになったことに
・ やはり我々の事業は「地場」の事業であり、そのエリアの状況
に大きく左右される
・ 旅行は基本的には「不要不急」のものであり、何かあれば、最
初に削られるものの一つである
と言うことがあると思います。ホテル、旅館だけを、ある特定の場
所で続ける限り、このリスクを避けることはできません。これを避
けようとすると、
・ 場所を分散する
・ 旅行以外の分野の事業を行う
と言うことになると思います。
それでは、まず場所の分散から考えて参りたいと思います。
事業拡大?そんなの無理。もうこれ以上借り入れはできないし。
その通りだと思います。でも、場所の分散は、必ずしも自力で行う
必要はありません。他の地域の旅館、ホテルとのアライアンスを検
討すれば良いのです。アライアンスの内容は「集客、スタッフのや
りとり」などを中心に「購買」等を追加していけば良いでしょう。
何かあっても協力しあえる様なアライアンスを組んでおくのです。
自治体間で災害の時に援助し合う協定があることをご存じの方もい
らっしゃると思います。
同じ悩みを分かち合い、愚痴り合うだけでなく、実際に援助し合う
仕組みを作るのです。
多くの旅館は、メールマガジンの最初にもお話ししたように「家
業」です。リゾート運営会社の様にネットワークを持っていません
し、組織力も資本力もない、と言うことだと思います。でも、「繋
がる」ことは可能です。
何かあったときに助け合う契約を結んだり、繁閑の差を利用して、
スタッフの融通を行ったりすることを行えば良いのです。思ったほ
ど困難なことではないはずです。
ただ、この方法だけでは、「旅行業全体が不調」になるリスクを避
けることはできません。
次の「旅行以外の分野の事業を行う」ですが、こちらの方が、今ま
でお話ししてきた「不景気」に対する策であると思います。
最も簡単なのは「飲食店をやる」ことではないか?と思います、本
業とのシナジーも見込めます。
ここで大切なのは、「何のためにやるのか」を忘れないことです。
「旅館のイメージを大切にしたいから」とやたら凝ったものや高額
な物のしてはいけません。不要不急のものになってはいけないので
す。地元の方達が、ちょっとした息抜きに使えるような、昼食、夕
食の代わりに使えるようなものが良いと思います。
外来向け、というのは多くの方がやっていても、地元向け、気軽な
もの、というのはなかなかないかも知れません。
星野リゾートの星のや軽井沢の泊食分離のお話の中で、食事の選択
肢として、「食堂」を考え、近隣の「玉川食堂」「まるや食堂」な
どを例に出して「村民食堂」を作った話をいたしました。どれだけ
本気で話しているのか?と思っていた方も多かったのでは?と思い
ますが今にして思えば、「本気も本気」だったのかも知れません。
もちろん、必ずしも飲食店にこだわる必要はありません。
FC展開をしているチェーンに加盟するのも良いかも知れません。
施設に隣接してコンビニを作ることができれば、施設と何らかの形
でスタッフなどを兼ねることもできるかも知れません。いろいろな
ことが非常に緩やかなコンビニチェーンもあります。
牛丼屋さんでも良いかも知れませんしカフェのチェーンでも良いか
も知れません。マニュアルなどからも学ぶことが多いはずです。
まずは地元のニーズをよく見て行うことが大切です。地元の方との
話の中で思わぬ提携などがあり得るかも知れません。介護、福祉な
どにもニーズがあるかも知れません。
このようにして、是非とも、少しでもリスクの低減を図っていく必
要があります。何かあったら、とたんに「給与遅延」になったりし
てはいけません。なんとしても持ちこたえるためにはあらゆる手段
を考えなければなりません。