GWが終わって、本当に人が動かない時期になってしまいました。
空欄の多い部屋のアサイン表を見てため息をつかれている方も多い
のではないか、と思います。
震災後、何が変わったのか?
今回は少し大きな目で見てホテル旅館の経営について考えたいと思
います。時間のできてしまう時ですから、じっくりと考えてみてく
ださい。
パナソニックが従業員を一万四千人削減する、と言うニュースがあ
りました。他社も特に製造業は同じような対処が今後も起こるので
はないか、と思っています。
ダイヤモンドオンラインのインタビューに応えて、一部上場企業で
あり、社長を公募して話題となったユーシンの田邊社長は2011
年5月に「3年後に国内製造業労働者の7割が失業する」と述べて
います。「日本以外の国でも何でも作ることができるようになり、
人件費の差を考えると製造現場は海外移転する。グローバルな競争
を勝ち抜くにはそうするだろう」ということなのです。震災前の発
言です。
震災で明らかになったのは、国内製造業のリスク管理の脆弱さです。
確かに今回の震災の範囲は今までには考えられないほど大きかった
かも知れません。しかし、よく考えると今回の震災の範囲は、日本
国内の中では広範囲ですが、世界地図の中では、ごく小さな範囲で
す。この小さな範囲にクリティカルな製造基盤を集中させていたこ
とが、日本企業の「グローバルに考えるより、国内のことを考え
る」ことによるリスク管理の甘さだった(少なくともそう見られ
た)のです。グローバルに競争している企業は、このことを今回、
思い知らされたのではないか?と思います。今回の震災による生産
への影響を考えると国内製造業は間違いなく製造拠点のグローバル
レベルでの分散化を図るでしょう。そして、それは、国内製造の空
洞化を意味します。
問題はそれだけではありません。
今回の震災によりリスク管理の甘さを露呈してしまった日本企業に
対する信頼も落ちています。「この程度のリスク管理しかできてい
なかったのか」ということですが、それはそのまま、海外企業の
「この程度のリスク管理しかしていない日本企業に商品製造のコア
な部分を任せるという”リスク”をとるべきではない」と言う「日
本企業離れ」に繋がっていきます。
また、今回の震災による供給のストップにより「代わりの供給先」
を探した企業も多数あると思います。これは、ユーシンの田邊社長
の言う「日本以外の国でも何でも作れるようになった」ことを考え
ると、「あんまり質の違わない物が、日本以外でももっと安く作れ
るのだ」と気づく機会になったのではないか?と思います。
震災後の原発に対する海外の反応も当初は「あの日本が管理しても
駄目なんだから原発はもう無理なのでは」と言う感じでしたが、だ
んだんと「本当は日本って駄目なんじゃない?」という感じに変わ
ってきています。
まとめると
・ 国内製造業の製造拠点の海外移転
・ 天災などのリスクを分散するため
・ グローバルなコスト競争に打ち勝つ為
・ 海外企業の日本企業離れによる日本企業の弱体化
・ 日本企業の内向き体質、リスク管理の甘さを問題視
・ 日本以外の企業の成長により、日本以外での調達可能に
・ 日本のコスト高と質への疑問符
・ 原発事故による放射能汚染
と言うことで、日本の製造業の海外移転、弱体化は避けられないも
のと思います。
では、これは我々のビジネスにどんな影響を与えるのでしょうか?
基本的にグローバル化の進行は「一物一価」に近づく(世界が一つ
の市場に近づく)ことを意味します。人件費についてはに「同一労
働同一賃金の法則」に近づいて行くことになります。
視察でタイのアマンに行った星野社長は、「タイでは、何でも人が
やっている。人件費が日本の10分の1だから、何でも人海戦術で
できる。これでは、なかなか勝てない」とつぶやいていらっしゃい
ました。
製造業の現場の仕事はおそらく誰でもできるのでしょう。シルシル
ミシルには、中国の工場の「スペシャリスト?」達がよく登場しま
すが、あの人達と同じ仕事を同じ環境でできないと、同じ賃金もも
らえない、というのが、この「一物一価」や「同一労働同一賃金」
です。
製造業の就業者数は22年度で全就業者のおよそ17%を占めてい
ます。法律上、国内の製造業従事者の賃金を、東南アジア諸国並み
に引き下げることはできないので、国内の製造業は「製造全体に占
める人件費の割合を限りなく小さくする=人手を掛けずに製造す
る」か「海外で製造する」しかありません。どちらにしても、「ど
うしても日本で製造するしかないもの」か「日本で製造するメリッ
トが製造コスト以外のところにあるもの」以外は海外に移転してい
くことになるのではないかと思います。
ということで、国内の労働市場は供給過剰になるのではないか?と
思います。普通、供給が過剰になれば価格は下がるので、賃金は下
がることになるでしょう。
賃金が下がると、消費は冷え込みます。不要不急の商品に対する態
度はますます厳しくなることと思います。
長くなりましたので、次回はもう少し詳しく、「我々のビジネスへ
の影響と対策」について考えたいと思います。