この数回ほど震災後の旅館ホテルのあり方について、述べて参りま
した。
この時期にどうしたらお客様に来て頂けるのか?皆さん、GWも終
わって考えていらっしゃることと思います。
私もGWも終わったことだし、家族で何処かに行けないか?と、ネ
ットサーフィンをして見ました。
みなさんも少し時間を使えば分かると思うのですが、この震災を機
に「泊食を分離する」ところ、「泊食分離」(夕食なし)のプラン
がだいぶ増えたように思います。
泊食を分離すると大凡5-6千円安くなっているところが多いよう
で、1.5万ー2万円くらいの旅館でも、夕食なしのプランは1万円以
下になっている様です。
自分で実際に宿泊することを考えるとよく分かるのですが、この様
なプランを検索するときの気持ちの流れは、こんな感じになります。
・ やった。一万以下だ、家族で4万切る予算で温泉に行ける
・ あれ、夕食なしか?夕食はどうしたら良いんだ?
・ 近くに何か食べられるところはあるのかなあ?
・ 近くに無いと結局チェックインが遅くなって、温泉でゆっくり
できないよなあ。
どうでしょう?皆さんもこんな感じではありませんか?
泊食分離、というのは「夕食を無くす代わりに単価を下げる」とい
うことだけなのでしょうか?
そもそも近隣に魅力的な外食施設がない、あるいは、あるかどうか
わかりにくい施設で、夕食なし、とすると、それは結局
「結構離れたところで夕食をとり、その分遅くチェックインする」
「一度チェックインしてから結構離れたところに夕食に行く」
「コンビニなどで夕食を購入してチェックインする:
あたりなのです。
星野リゾートの星野社長は、星のやを作るときに泊食分離をしまし
たが、あれは、軽井沢だからできたことなのです。(冬だったら軽
井沢でも厳しいと思います)軽井沢にはたくさんレストランがあり
ますし、そもそも星野リゾート内にも、村民食堂、カウボーイハウ
スなどをはじめ様々な食事の選択肢があります。同じリゾートでも、
磐梯山だったら、会津若松まで30分以上掛けて出かけなければな
らず、食事に行く、と考えると3時間近くホテル、旅館を離れなけ
ればなりません。
小淵沢のリゾートでは震災後、近隣に様々な食事可能な施設等があ
ることをアピールして、泊食の分離を行っていましたが、そもそも
絶対数があるわけではないので、事前に夕食をとるところも計画し
ていく(休みじゃないことを確認して行く)位でないと、厳しいと
思います。リゾートの宿泊者の何割もを収容可能なレストランはあ
りません。
多くの施設が、「泊食分離」という流れだけに注目して「それじゃ
あ、お客様は現実問題どうするのか」ということをあまり考えてい
るように思えません。「泊食分離」がごく一部の方のニーズしか満
たしていないのは、とれも残念なことだと思います。
では、泊食分離するにはどうしたら良いでしょうか?
その為にはそもそも「何に為に泊食分離するのか」「泊食分離はど
んなお客様のニーズに応えるのか」をよく考えなければなりません。
<泊食分離のニーズ>
泊食分離、とは言っても実際には、夕食なし、と言うのがほとんど
だと思いますので、ここでは、温泉旅館における「夕食なし」のニ
ーズを考えてみます。
a. 到着が遅くなる(夕食に間に合わない)
b. できるだけ安価に宿泊したい(豪華な夕食はいらない)
c. 目的地は別にある(ビジネスホテル代わり)
d. 近隣に食べたいものがある(旅館の夕食は要らない)
a. 到着が遅くなる(夕食に間に合わない)
これは、文字通り、出発が遅くなる、立ち寄りの予定がある、等に
よって旅館、ホテルへの到着が遅くなる為に、夕食に間に合わない、
と言うニーズです。お客様は夕食をまったくとらない訳でも、とり
たくない訳でもなく「旅館・ホテルではとることができない」とい
う場合です。温泉旅館、ホテルを選ぶのは、「場所」(ここが便
利)または「温泉」(どうせなら温泉に入りたい)などではないで
しょうか?
b. できるだけ安価に温泉に宿泊したい
これは、温泉旅館に安価に宿泊したい、温泉に入るのが目的なので、
食事にはあまりこだわらない、と言うニーズです。温泉さえ良けれ
ば、伊○園で、と言う感じでしょうか?ここでは、温泉そのものの
魅力(泉質、造りなど)が重要であると思います。
c. 目的地は別にある
これは、例えば、「フジロック」に行く、とか、近隣で仕事がある、
とか言う理由で宿泊するけれど、どうせなら温泉に泊まろう、とい
うことで、ニーズの中身としては、あまりb.と変わらないところが
あるかも知れません。ただあくまでも温泉はおまけなので、それほ
ど温泉にはこだわりがないかも知れません。
d. 近隣に食べたいものがある(旅館の夕食は要らない)
これには
・ 旅館の夕食がイヤ(例えば夕食はイタリアンが良い。和食は嫌
い)
・ 旅館の近隣に食べたいレストランがある
等があると思います。
近隣に例えば新潟県岩原スキー場にある「ピットーレ」の様な店が
あれば、夕食はそっちでとりたい、と思う人もいるかも知れません。
このように考えてきてみると、案外「夕食なし」のニーズであって
も「旅館で決められた時間に決められたメニューの夕食をとらな
い」だけであって、「価格や内容」のバリエーションさえあれば夕
食をとる可能性があるのではないか?ということが分かります。
本当の意味で「旅館、ホテルで夕食をとるニーズがない」のは「他
に特に食べたいものがある」など限られた場合のみで、実際には
「選択肢がない」(価格、時間、種類)のが原因であるのかもしれ
ません。
夕食なし、にすることによって、確かに夕食を何らかの理由で「と
れない・とりたくない人」のニーズを確保することはできますが、
それが本当はどんなニーズなのか?を分析してきちんと対応策をと
ることが、他の施設との差別化につながっていくはずです。
ただ、「夕食を外した」泊食分離のメニューを設定するだけでなく、
「お客様がどう考えているか」を考えることで何か工夫が可能かも
知れません。