前回は、泊食分離のニーズが実は「夕食を無くす」ことにあるので
はなく、「ホテル・旅館の夕食(のバリエーション)に対する不満
足(選択肢のなさ)」」にあるのではないか?と言うお話をいたし
ました。
「そんなことを言ったって、お客様は現実に”泊食分離”して欲し
いと言っている」という方がいらっしゃるかも知れません。
今回はお客様が「言っている」ことは、実はお客様が「したい」こ
とであるとは限らない、と言うお話をしたいと思います。
お客様が「何かして欲しい」という時、おおざっぱに言って、可能
性は2つあります。
1. 本当に「それ」をして欲しい場合
2. 何かしたいことがあって、その「解決策」として思いつくもの
をお客様が考えて言っている場合
2. がわかりにくいと思いますので少し説明致します。
お客様には実はしたいことが会ってその解決策として思いつくもの
をお客様が仰っている、というのは例えばこんな場合です。
「ガソリンスタンドに行ってガソリンを入れたら”窓拭きますか”
と言われた」
どうしよう?と思ったことはありませんか?どうしよう、と思った
ことがある方、なぜですか?
それは、私たちのニーズが「窓を拭く」ことにあるのではなく「窓
をきれいにすること」にあるのに「窓を拭く」という”行為”だけ
提案されていて、その結果”きれいにする”というニーズが満たさ
れるかどうか分からない(拭いたら、かえって前が見にくくなった、
ということがある)からです。
これをホテル、旅館のサービスに当てはめて考えると、お客様は、
「きれいにして欲しい」というニーズを、「拭いて欲しい」という
対策に置き換えて我々に伝えることが多いのです。だから「拭いて
欲しい」と言われて拭いても「きれいになってないじゃない」と言
われてしまうのです。
泊食分離も同じことで、お客様のニーズが「夕食を無くす」ことな
のか?それとも実際には別にニーズが存在して、その解決策として
お客様が「泊食分離しかないか」と考えているのか?よく考える必
要があると思います。
星のや軽井沢は当初から泊食分離を計画していましたが、それは、
星野さんらしい「顧客への洞察」を元にしています。
具体的には
「軽井沢にはたくさん外食可能な選択肢がある」「イタリアンでも
フレンチでも定食屋でもなんでもある」「それだけではなく、特に
近隣に星野リゾートでも選択肢を確保しよう」(ハルニレテラスの
レストラン・総菜販売、村民食堂、カウボーイハウス、ケータリン
グなど)村民食堂の競合?は元々は「玉川食堂」という湯川沿いの
小さな食堂や、町役場隣の丸屋食堂でした。
そう、ただ「夕食を無くした」訳ではないのです。
本来は「泊食分離」というのはプロダクトアウトな考え方だと思い
ます。もっとお客様のことを考えて、マーケットインな考え方で
「泊食分離」をとらえる必要があるのではないでしょうか?
そしてそれが、お客様の真のニーズを聞くことになると思うのです。
繰り返しになりますが、お客様は「泊食分離」をして欲しい訳では
ないかも知れません。単に「時間の制約」「メニューの制約」「価
格帯の制約」の為に「だったら要らない」と言っているのかも知れ
ません。泊食分離にしてもお客様はきっと夕食をとっていらっしゃ
るのです。「夕食は要らない」がニーズでない可能性もあるのです。
お客様の考えを想像すること、
は、ただ単に
お客様の言うとおりにすること
ではありません。
お客様の言ったことを超えることをご提供する、
と考えて、お客様の真のニーズを考てみることが必要です。