前回からは旅館のマーケティング上の特性についてご説明していま
す。
最初は4Pの中のProduct=商品から、前回は旅館の商品とは何か?
旅館の商品を考える上でのマーケティング上重要な要素である、
「顧客から見た魅力」と「魅力の伝達力」から、「伝達する媒体と
しての平面媒体」のお話を致しました。
平面の媒体では、特に同じ媒体に横並びで旅館が載ってしまう様な
媒体の場合、差別化できる要素がきわめて限られている、と言うお
話でした。
では、どうしたら魅力は伝わるのでしょうか?
前回お話したように、平面媒体(雑誌、パンフレット、インターネ
ットなど)で他社と横並びで出されてしまう場合には、魅力の要素

・ 特典、食事の品目数が多い
・ 魅力的なもの(食事で言えば、カニ、鮑、エビ、和牛など)が
付いている
・ 価格が安い
・ 施設上魅力的な要素が付いている(個室露天風呂など)
・ 写真がすごく魅力的である
等きわめて限られた、経費のかかる要素になってしまうと言うこと
でした。
これは、平面媒体の持つ「特性」なので、他社と横並びで出されて
しまう限りどうしようもないものです。
実際、好むと好まざるとに関わらず、旅館は上記の要素で競争して
います。経費をかけて、販売価格を下げて、その上施設に投資して
いるのです。
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もう一度「魅力を伝える」とは
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来たことのないお客様を集客するには、自分の旅館がどのように良
いのか、お客様に伝えなければなりません。
つまり
「魅力の内容」X「伝える力」
を高めなければなりません。
あなたがどんなにすばらしい商品を持っていても、その商品力をお
客様に伝えることができなければその商品を売ることはできません。
あなたの商品がどんなにすばらしくても、日本語で説明して外国人
に売ることはできないのです。「伝わらない」から、です。
商品力と伝達力は、両方必要なのです。
実は、旅館のマーケティングのヒントは、この「伝達力」の方にあ
ります。
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リピーター戦略は有効か?
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平面媒体(紙、ネットなど)の限界を知って、「それでは、体験し
てもらった人を大切にしよう」という考えがあります。
某リゾートも言っている「リピーター化」戦略です。
リピーターの維持は、新規顧客の獲得の数分の一のコストで済むか

と言うのもその理由です。
リピーターは大切にしなければなりません。リピーターが大切でな
い、と言う人はいないでしょう。私もその考えには異存はありませ
ん。
でも、リピーターは基本「増えない」のです。
「ブランドスイッチング行列」というのをご存じでしょうか?
銘柄忠実度(ブランドロイヤリティ)を具体的に表現しているもの
で、一購入サイクル内で、同じブランドを購入する確率、流出する
確率を行列にしたものです。
たとえば、「Hや」に宿泊した人が、次の旅行でも「Hや」に宿泊
する確率を3/5、他に宿泊する確率を2/5、とします。「H
や」の顧客100人は、次の機会には60人に、その次の機会には
36人に減ってしまいます。他の旅館に行く確率よりも「Hや」に
行く確率の方が遙かに高いにもかかわらず、です。
100%忠実なリピーターばかりでない限り、リピーターは必ず減
るのです。
従って新規顧客を獲得することなしに旅館を続けていくことはでき
ません。
リピーター化戦略は重要ではありますが、それだけでは旅館が生き
ていくことはできないのです。
次回は、旅館の商品と、伝達について、もう少しお話ししたいと思
います。