旅館の再生方法は誰に聞いてもだいたい同じと言うことは、前回ご説明致しました。その通りだと言うことは、皆様がちょっとネットを見回してみればおわかりいただけると思います。

再生方法はだいたい同じなのに、上手くいかないのは
・みんな間違った再生方法を選択している
のか
・方法は合っているけれど、実行出来ない
のか、どちらかです。

再生方法は他にあまり無いと思いますので、上手くいかない原因は、「こうやったら良いのだろうとはわかるけれども、実際にやってみると上手くいかない」だと思います。

ではなぜ上手く実行出来ないのか?

1つの原因は「慣性力」です。走り続けているモノは、同じ方向に走り続けようとする、と言うアレです。

現場には今やっていることをそのままやり続けたいと言う「慣性力」があります。

現場をよく知らないコンサルタントの方、再生会社の方は、いきなり現場に入って「こう変えましょう」とか言うのですが、現場としては、「そんなことできるはずがない」となってしまう訳です。

慣性力に打ち勝つには「徐々に向きを変える」ことです。

つまり、急に仲居さんに「フロントも清掃もやってね」というのではなく、徐々に、仲居さんと話をしながらやっていくのです。
そのときに「仲居さん」だけに無理強いしてはいけません。旅館のスタッフの中でも仲居さん達はもっとも「使える」人たちなのですが、一方で、すごく「プライド」を持っている人たちであったりするのです。場合によっては仲居さんから始めるのではなく、他の部署、特にバック部門が「清掃」にはいる、などから始めると良いのかも知れません。

そのようにして、旅館のスタッフを徐々に巻き込みながら、業務を変更していくのです。

また、旅館のスタッフにとっては仕事が増える訳ですから、きちんと仕事が増えたことに報いなければなりません。直接に金銭的に報いることだけでなく、今までできていなかった設備や備品を購入するとか、心からの感謝を示すとか、いろいろなやり方があります。旅館の経営者として、スタッフの皆さんと本気で、改善していくのだ、と言うことが見えると良いと思います。

マーケティング、ターゲットの変更についても同じことが言えます。この場合の慣性力とは、皆さんの過去の成功体験です。団体客、エージェントの集客で比較的簡単に儲けることができた経験を捨てて、本当にできるかどうかもわからない、新しいターゲットや新しい集客チャネルに頼るのは、誰でも不安なモノです。
この船は水が入り始めていると分かっていても、乗ったことのない隣の見慣れないものには乗り移れないのです。

ですが、水の入っている船は必ず沈みます。そう分かっていても乗り移れないのが「慣性力」なのです。どうしますか?
一気に乗り移らなければ良いのです。ちょっとずつ足を移して、そろりと様子を見ながら体重を移していくのです。

ターゲットを急に変えるのは怖いと思いますが、少しずつ実験してみませんか?成功体験を積みながら変化していくことができれば、ちゃんとマーケティングできるようになるはずです。