さて、多くの宿泊施設がいまや導入しているスパ、ですが、上手くいっているという話しを聞いたことがありません。

なぜなのでしょうか?

それは、スパが他の旅館、ホテルの仕事よりずっと労働集約的であるからです。
スパ商品を提供するに当たって、最も提供側にとって重要な要素は「スパのトリートメントは、一度に2名一緒にはできない」ということです。
スパは、繁閑の波のある施設には向かないのです。

繁閑の差があると言うことは、繁忙な時期にはお客様のご要望に応えられるだけの商品を用意できず、閑散な時期にはセラピストを余らせると言うことです。

一般に他社に依頼して施術者を派遣してもらっていたり、テナントの様な形式で、業務を他社に委託している場合、20-30室の旅館では、土日2名、平日平均1名程度しか配置されていないはずです。
委託を受けた企業が大きく赤字にならないようにするためには、「閑散期」に合わせた人員配置を行うしかないからです。

我々の担当したある客室数20室程度の高級旅館でも、担当のセラピストは2名で、平日は1名しかシフトされていませんでした。それでも月の半分は「スパ利用者が1名もいない」状態でした。もちろん、スパは赤字です。それでも高級旅館であったために何とか、委託先は「あそこでもやっています」という為だけにしばらくは継続していましたが、「これ以上の運営継続は困難」という状態になりました。

繁忙期、閑散期の差に加えて問題なこと、それは「スパの需要は集中するから」ことです。
一日の間でも、スパの需要があるのは、「チェックイン後、食事前」と「食事後就寝前」の僅かな時間のみです。ところが、お客様から見ると、例えば、最近の大切なお客様である「おしゃべり目的の女性グループ」などは「スパを一度にグループ全員で受けたい」ということになります。もしスパを1人ずつ受けて(2名ずつでも)、合計4時間掛かります、等と言われたら、「せっかく旅館にきているのに、みんな揃っている時間がほとんどなくなってしまうから受けたいけれどあきらめるわ」と言われてしまいます。もっとも有望なお客様を獲得出来ないのです。

こうした状況はどの施設も大差ない状態のはずです。施設の稼働がやたら高くても、スパに関しては同じ様な状態のはずです。

スパ施術者を「スパ専任担当」にしている限り、解決の方法はありません。

効率化の問題は旅館の他の仕事と同じことです。

続きは次回に。